養蜂場だより

残暑の養蜂場から

ミツバチの巣箱はエアコン付き

夏になると、平地ではミツバチが好む花がほとんどなくなり、蜜切れを起こす心配があるほどですが、山のあちらこちらに、カラスザンショウの花が咲きました。ブロッコリーを大きくしたような花が、盛り上がって見えるので、遠目にもよくわかります。

ローヤルゼリーを生産している養蜂場は、連続して仕事をする関係で、山の方に移動させていませんので、夏草とスズメバチ、そして暑さとの闘いです。管理している私たちも汗だくですが、巣箱の中も暑く、働き蜂は近くの水場に通い、盛んに水を持ち帰り、その気化熱によって温度を下げようとしています。

巣箱の中は、数万匹のミツバチで超過密状態ですから、木陰のないところでは高温になります。ミツバチが幼虫を育てるときには、35度前後の一定の温度が必要なので、温度が上がり過ぎると水を運び、翅で風を送って冷房をしているのです。

  •     カラスザンショウは7〜8月にかけて背の高い木のあちこちに小さな白い花を咲かせます。

    カラスザンショウは7〜8月にかけて背の高い木のあちこちに小さな白い花を咲かせます。

  •     暑い時期は、近くの水場からせっせと水を運び、巣の中を冷やします。

    暑い時期は、近くの水場からせっせと水を運び、巣の中を冷やします。

一群のミツバチは最大何匹になる?

女王蜂は一日に1500〜2000個の卵を産むといいますが、あまりにも暑過ぎるときや、蜜源の植物が少ないときには、産卵を制御しています。極端な場合は、全く休止してしまうこともあります。そうなると、一月を過ぎたころから、働き蜂が急激に少なくなってしまうのです。

働き蜂は、蛹から羽化した後、約40日足らずで寿命が尽きてしまいますから、女王蜂が毎日1500個きちんと生み続けていれば、巣箱の中のミツバチの数は、常に6万匹前後になっているはずです。しかし実際には、2段重ねにした巣箱が、ミツバチで溢れるほどになっても、4万匹を超える程度です。つまり、女王蜂は周りの環境に合わせて、産卵量を加減していることがわかります。

ヒトの細胞と働き蜂

女王蜂と働き蜂、そして少数の雄蜂とで構成されているミツバチの群れは、一匹だけでは決して生きていくことができず、数万匹の群れ全体が、一つの個体のようなものなので「超個体」と呼ばれることがあります。

そして、遺伝子を次の世代に残すという仕事を、女王蜂と雄蜂で担い、個体の維持、つまり一つの群れを養っていく仕事を、働き蜂が役割分担しながら果たしているのです。

働き蜂は、約40日周期で世代交代しているわけですから、40日後のミツバチの巣箱の中は、女王蜂以外はほとんど入れ替わっているということになります。

人間の細胞も、皮膚で約30日、胃や腸の細胞でも45日間程度で、新しく入れ替わっていると聞きますが、ミツバチの世界の世代交代もよく似ていますね。働き蜂は、一つの群れという生命体の、一つの細胞に相当する、といえるのかもしれません。

お盆を過ぎれば、もう初秋とはいえ、残暑が厳しい日が続きます。涼しい風が吹き始めるのももうすぐですが、養蜂場では、スズメバチとの闘いがまだまだ続きそうです。

  • 数万匹ものミツバチが、それぞれに役割を分担し、助け合って生きています。

    数万匹ものミツバチが、それぞれに役割を分担し、助け合って生きています。

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