健康食品、化粧品、はちみつ・自然食品の山田養蜂場。「ひとりの人の健康」のために大切な自然からの贈り物をお届けいたします。
巣箱を置いて、ミツバチを飼う
場所のことを養蜂場と呼びます。
ではさっそく養蜂場へと
ご案内いたしましょう。
まず、わたしの仕事場である、山田養蜂場のある「鏡野」のご紹介からはじめたいと思います。
鏡野町は中国山脈の山すそに位置しており、北は「泉山(いずみやま)」という千メートル級の山がそびえ、そこから流れ出る「香々美川」(かがみがわ)がつくる渓谷に沿っておりてくると、市場(いちば)という周辺で平野に変わります。岡山県の美作(みまさか)盆地のはずれにあたるのですが、川は町内を流れて岡山の三大河川のひとつ吉井川に合流します。高い山があり、低い里山があり、蛍の飛ぶ清流が流れ、春にはれんげが咲く田んぼが広がっている、といった典型的な田舎の風景です。
山田養蜂場はこのような自然の残っている鏡野町の各地に何ヶ所も分散して養蜂場を設置しています。
さて、養蜂家が養蜂場を新しく作ろうとする時、一番初めに考えることは一体何でしょう。
それはミツバチの餌になる蜜を良く出してくれる花があるかどうかということです。
春先から晩秋に至るまで途切れずに蜜や花粉を供給してくれる花が咲いている場所が最適なのです。
しかしすぐ近くに花が無いからといって心配することはありません。
ミツバチは普通、半径2キロメートルくらい飛びますので、1,250ヘクタールもの領土を持っているのと同じなのです。
その範囲内には春には梅や桜もあるでしょうし、河原や田んぼには菜の花やれんげが咲き、農家の柿やクリの木、カボチャやヒマワリも植えてあるでしょう。
近くの山には「ソヨゴ」「ツゲ」「リョウブ」など色々な山の木が花を咲かせます。
その花の量によって一つの養蜂場に置く箱の数を決めています。
つまり地図の上で行動半径がなるべく重ならないように、ここには20箱、向こうには30箱、蜜源の植物が多いところには50箱というように分散しておいてあるのです。
そして人工林のほとんどが杉か桧の植林に限られてしまっています。
実は鏡野町でも部分的にはこのような針葉樹ばかりの林があるのです。
このような所に養蜂場を設置しても、杉や桧、松などの針葉樹は蜜を出さないのでミツバチの食料が足りなくて不向きです。
もちろん針葉樹も花は咲かせます。杉は花粉症の原因となるほどの花粉を撒き散らしますが、これは風媒花なので、蜜を出して虫を呼び寄せ受粉の媒介をしてもらう必要が無いのです。
世界的な樹林帯の区分でいうと日本は照葉樹林帯という区分に入ります。
これはもともと日本がブナ、カシワ、クヌギ等の広葉樹で覆われていたことを表しています。
このような広葉樹の林には、多くの生き物を養い、多種多様の植物が植生していて、ミツバチも花蜜と花粉を得ることが出来ます。山の蜜源植物には小さくて目立たない、色も地味なものが多いようです。
以上、理想的なことばかりいいました。この全ての条件が揃っていないとミツバチを飼えないという訳ではありません。多少の不備は日陰や風除けを作ったり、ブロックを置いて湿気を防いだりという工夫をすることで解決します。
どうにもならないのは蜜源植物、花粉源植物です。
蜜源になる植物と、花粉源になる植物を合わせて養蜂植物と呼びます。 庭や空き地に景観を兼ねて積極的に養蜂植物を植える事を考えましょう。 どのような植物がミツバチを喜ばせるのか季節毎にまとめてみました。
春 | イヌノフグリ、ウメ、ツバキ、ヒサカキ、タンポポ、サクラ、ナタネ、レンゲ、ニセアカシア(通称アカシア)、ミカン、etc |
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夏 | カキ、クロガネモチ、ソヨゴ、クリ、トチ、リョウブ、ナツハゼ、ウリ類、ヒマワリ、ヤブカラシ、カラスザンショ、ソバ、etc |
秋 | コスモス、ハギ、クズ、セイタカアワダチソウ、etc |
冬 | ビワ、etc |
養蜂家のイメージというと、かつて「花のジプシー」といわれたように南から北へ季節の花を追いかけて移動していく姿を思い浮かべられる方も多いと思います。
今もレンゲの採蜜が終わった後、東北や北海道へ移動してアカシア、トチ、シナ、クローバーなどの採蜜をする養蜂家もおられますが、このような大転飼養蜂はかなり少なくなっています。生活や教育の問題、養蜂家の高齢化の問題などから、県内の涼しい高原へ移して夏を越させるような、小転飼養蜂または同じ場所で飼育する定地養蜂が増えてきました。