養蜂場だより

〈8月の養蜂〉カラスサンショウの流蜜期

暑い盛りに咲く花

梅雨が明けると、鏡野の里山には、「カラスサンショウ」が咲き始めます。7月の終わりから8月前半にかけて咲くこの花は、ミカン科の落葉樹で、大木になると十数メートルになります。西日本に広く分布し、幹には無数のトゲがあるため、うかつには近寄れない木です。花はお世辞にもきれいとは言えませんが、小さな花で、離れたところからみると、ブロッコリーのような形をしています。はちみつの味は、ミカン科の植物だけに柑橘系のさわやかな香りがして、キレのある甘さが特徴です。

  • カラスサンショウは背の高い木のあちこちに小さな花を咲かせます。

    カラスサンショウは背の高い木のあちこちに小さな花を咲かせます。

巣箱を埋め尽くす花蜜

さて、この「カラスサンショウ」が咲くと、ミツバチたちは花蜜を、狂ったように集めて来るので、私たち養蜂家は落ちついてはいられません。もちろん樹木の花なので、年によって流蜜(花蜜の分泌)する量は異なるのですが、大量に流蜜することが多いのです。
その、大量のカラスサンショウの花蜜をミツバチたちは、せっせと巣に貯えていきます。あまりにも大量の花蜜が入ってくるため、卵を産んで幼虫を育てるスペースまでもはちみつを貯め込み、巣の中がはちみつでいっぱいになります。そのため、女王蜂が卵を産み付ける巣房(すぼう)(巣の六角形の穴)が無くなり、ミツバチを増やすことができなくなるのです。

  • 巣板の真ん中部分にはミツバチの育児スペース、端の方には蜜が貯えられています。

    巣板の真ん中部分にはミツバチの育児スペース、端の方には蜜が貯えられています。

夏を乗り越えるために

ところで、春から夏にかけての働き蜂の寿命はどれぐらいかというと、およそ40日といわれています。巣の中はまさに自転車操業状態で、働き蜂が次々生まれては、死んでいくのです。ですから、産卵・育児のスペースが減ってしまうと、生まれてくる幼虫が少なくなるため、そのうち突然、巣の中の働き蜂が激減してしまうのです。
産卵・育児スペースを確保するには、人の手でこまめに採蜜するか、巣の規模を大きくするために、巣板(すばん)を増やしてあげる方法があります。
巣箱の中では、次から次へと花蜜が運び込まれて、産卵・育児スペースはもちろん、はちみつを貯蔵するスペースを確保するのも大変な状況になります。そこへ巣板の元になる巣礎枠(すそわく)を挿し込むと、働き蜂たちが、突貫工事で、お腹のロウ腺からミツロウを分泌して、新たに巣房を造っていくのです。
そうして、巣の規模を大きくするための巣礎枠を挿入しても、早いときには、1週間ほどで巣板を盛り上げるだけでなく、はちみつをあふれんばかりに貯えてしまいます。1枚の巣板いっぱいに貯め込まれたはちみつは2〜3キロにもなります。
そうこうしているうちに、やがてお盆が来ます。お盆が明ける頃には、カラスサンショウの花も終わり、スズメバチの季節が始まります。スズメバチに負けないような勢力のミツバチを維持するために、先に述べたような作業をするのですが、夏の屋外での作業は熱中症との闘いです。私自身が暑さに負けない健康管理をした上で、ミツバチがカラスサンショウの大量流蜜で、群勢を落とさないための管理を、しっかりとしていきたいと思います。

  • 夏空と木々に囲まれた当社の栗谷養蜂場

    夏空と木々に囲まれた当社の栗谷養蜂場

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