健康食品、化粧品、はちみつ・自然食品の山田養蜂場。「ひとりの人の健康」のために大切な自然からの贈り物をお届けいたします。
鏡野では、冬の間産卵を休んでいた女王蜂が、再び産み始めるのは、大体2月の初め頃です。働き蜂は、羽化するまでに21日間、その後の20日間ほど、巣箱の中で仕事をしますので、今年生まれた若い蜂が、外を飛び回るようになるのは、3月半ば過ぎということになります。
去年の秋生まれの蜂が、寒い季節を乗り切り、若い蜂を育てた後、世代交替していくのですが、巣箱の周りに息絶えた働き蜂を見かけることが多くなります。ミツバチは春から秋の間、40日足らずしか生きられないので、寿命の尽きた蜂を見ることはめずらしいことではないのですが、この季節には特別感慨深いものがあります。
春になると、若い蜂が巣箱の外で元気に活動を始めます。
人間は一人だけで生きてはいけませんが、ミツバチの世界でも、人間以上にお互いの協力がないと成り立ちません。一つの巣箱で暮らしている群れ全体で、一つの生命のようなものなのです。羽化して間もない働き蜂は、掃除や育児から始まり、巣作りやはちみつの熟成、警備と、日数に応じて役割が変わり、仕事を分担しています。そして生後20日くらいになると、やっと外に飛び出して、花の蜜や花粉を集める仕事につくのです。巣箱の中では、沢山のミツバチの赤ちゃんが餌を待っているわけですから、妹蜂のためにお姉さんが、一日中飛び回って花から餌をもらってきているという訳です。
外で仕事をしている働き蜂を、外勤蜂とも呼びますが、もし一匹がたっぷりある蜜源を見つけると、他の蜂にその場所を伝えなければなりません。その伝達方法が、有名なミツバチの「8の字ダンス」です。巣箱の前の空中で飛びながら踊っている、と思っておられる方も多いのですがそうではなく、ミツバチは巣箱の中の垂直に並べられている巣板の上で、お尻を振りながら小さな8の字を描くのです。真っ暗な巣箱の中で、真上をいつも現在の太陽の位置ときめており、蜜源の場所と太陽の位置の角度を、8の字で表現しているということなのです。それも蜜のある場所の方向だけではなく、その距離や、蜜の品質まで伝えているのですから、その能力は驚くべきものがあります。
私たちが巣板を引き上げて、内部を点検する時に、ブルブルと身体を震わせて、ダンスをしている働き蜂を見ることがよくあります。すると「あっちの方角の花に飛んでいるな」ということが、私たちにも大体解るのです。
このミツバチのコミュニケーションの方法が発見されたのは、70年以上も前のことですが、そのほかにもフェロモンや振動音、接触などでお互いに会話をしていることが、今ではわかっています。人間よりもはるかに昔から、高度の社会性を獲得していたミツバチにとって、コミュニケーションの手段は欠かせないものだったに違いありません。
活発なダンスが行われる時は、豊富な花蜜があるということで、多くの働き蜂が動員され、一斉に飛び立っていきます。菜の花、桜、レンゲと、これから春の花が咲き継いでいきますが、一つの群れを一つの命として、無心に働くミツバチの世界では、情報の伝達に関しては、人間よりももっと真剣なのかもしれません。
香々美川の岸辺に咲き広がる菜の花。