健康食品、化粧品、はちみつ・自然食品の山田養蜂場。「ひとりの人の健康」のために大切な自然からの贈り物をお届けいたします。
ローヤルゼリーの生産は、実は、巣箱に女王蜂がいないという状態にして、働き蜂が新しい女王蜂をつくり出そうとする習性を利用したものです。
毎朝、涼しいうちに、養蜂場に着くと、まず3日前に仕込んだローヤルゼリーの枠を、巣箱から取り出します。この枠のことを移虫枠と呼んでいますが、自然の状態でできる王台(新しい女王蜂が育つ特別室)と同じ大きさの、プラスティック製の人工王台が並んでいます。取り出した移虫枠の人工王台の中には、3日前に入れておいた小さな幼虫が育っていて、もう少しで蛹さなぎになるという状態です。
この移虫枠を、それぞれの巣箱から回収してテントに持ち帰り、まずナイフでふたを切り取ります。3日前には1ミリほどだった幼虫が、ローヤルゼリーを食べて1センチほどに大きくなっており、背中を丸めて王台の中に納まっています。
次に、ピンセットで幼虫をひとつずつ取り除いた後、王台の底に貯まっているローヤルゼリーを、専用のヘラですくい出して採取するのです。集めてくる花粉の量が少なかったりすると、ローヤルゼリーをつくってくれないこともあります。春先はあまり成績がよくなかったのですが、今では100%とはいえないまでも、95%以上の王台に、ローヤルゼリーをつくってくれるようになっています。
ローヤルゼリーのことを王乳ともいいますので、この作業を「採乳」といいます。採乳している間に、別の人が巣箱の中から、生まれてから3日目までの、働き蜂の幼虫がたくさんある巣板を探します。これはローヤルゼリーを採取した後、すぐに次を仕込むためです。
女王蜂は1日に1500〜2000個の卵を産んでいますが、天候の加減、花粉や蜜の入り具合で産卵調整をしています。また、同じ巣板にそろって産みつけているとは限らないので、適当な巣板を探すのは、結構手間がかかります。
ふたが盛り上がった人工王台
毎日一つひとつの巣箱を確認。ローヤルゼリーの仕事に、休日はありません。
ここから移虫作業が始まります。直径5.5ミリの巣穴の底から、小さい幼虫を1匹ずつ、移虫針という特別の道具ですくい出し、人工王台に移し変えるという、手先の器用さと視力が要求される仕事です。手荒く扱うと、デリケートな幼虫はすぐにつぶれてしまいます。また、あまりゆっくりやっていると、幼虫が乾いてしまいますので、スピードも必要となります。この作業は、子どものころから箸を使う文化で育った人たちでないとできない仕事だろうと思います。
移虫した枠は、3日後にまた採乳しますので、同じ巣箱は3日に一度、採乳と移虫が繰り返されることになります。養蜂場の巣箱は三分の一ずつのグループに分けて、毎日連続的に行っています。つまり、土曜日も日曜日も関係なく、雨が降っても大風が吹いても、休みがないのがローヤルゼリーの仕事なのです。
細心の注意を払いながら幼虫をそっとすくい出し、人工王台へ移していきます。
山田養蜂場では四十数年前、先代の社長が病弱だった自分の娘のために、ローヤルゼリーの生産方法の開発を行った歴史があります。今では技術も用具も格段に良くなって、ある程度の量産もできるようになりましたが、基本は何も変わってはいません。昔の話を聞くと、プラスティックの王台がまだ発明されていなかったので、蜂の巣を溶かしたものを、木の棒の先で型取りして王台を手づくりしていたそうです。
貴重なローヤルゼリーをつくり出すために、先輩たちの多くの苦労があったということを、いつまでも心にとどめて、養蜂家としての道を進んでいこうと思います。