養蜂場だより

さまざまなミツバチのさまざまな性格

真冬の養蜂場では、枯葉を落とした木々の下に、冬囲いをされた巣箱がミツバチの羽音もなく静かに並んでいます。その巣箱の中では、ミツバチたちが寒さを我慢しながら、身を寄せ合ってじっと春を待っています。今回はそんなミツバチたちをご紹介しましょう。
私たち養蜂家が飼育しているミツバチはセイヨウミツバチという種類で、日本には明治時代(1877年)に初めて入ってきたものです。もともと日本には在来種としてニホンミツバチというミツバチが自然に生息しており、江戸時代の文献などにはその飼育法が書かれているものもあります。このニホンミツバチですが、とても神経質なために、巣箱の中を何度も覗いたり、スズメバチに襲われたりすると、すぐに嫌気をさして巣を捨てて逃亡してしまいます。そのため養蜂業として飼育するのには不向きです。しかし、あまり人を刺すこともなく、くりぬいた丸太や空箱を置いておくと自然に巣分かれした群が入ってきたりして、なかなかかわいいところがあります。そのため各地で趣味として飼育している方も大勢おられるようです。

さて私たちが飼育しているセイヨウミツバチにもさまざまな種類があり、巣箱を覗くと、腹部の縞が黄色いものと、ほとんど白黒に近いものなどが混在しています。これはイタリア種、カーニオラン種(ユーゴスラビア原産)、コーカシアン種(ロシア連邦コーカサス地方原産)などが混血して雑種となっているからです。女王蜂が生まれると、巣箱から飛び出して空中で付近の巣箱から出て待ち受けている複数のオス蜂と交尾します。そのため、生まれてくるミツバチにはいろいろな系統の血が流れているということになるのです。
プロポリスの原産国であるブラジルのアフリカバチ化ミツバチについてはあまり知られていないようです。キラービーとか殺人蜂という別名を聞かれた方もおられるかもしれません。また、プロポリスを大量に集めてくるということから、大きな体格のミツバチと思い込んでいる人も多いようですが、むしろ、普通のセイヨウミツバチよりもやや小さめで、色もほとんど違いが無いので一見して見分けがつかないほどです。名前だけ聞くと、獰猛なスズメバチのようなミツバチを連想される方も多いようですが、外観は私たちが飼っているセイヨウミツバチとほとんど変わりません。
では、なぜこのアフリカ蜂化ミツバチが誕生したのでしょうか。

ブラジルは移民の国です。文献によれば1839年にポルトガルから初めて、ヨーロッパのミツバチが輸入されたとあります。しかし、ブラジルの熱帯又は亜熱帯の気候にはこれらのミツバチは、適してはいなかったようです。そのため1956年、サンパウロ州リオ・クラーロにあるサンパウロ大学の研究室に品種改良のため採蜜力や繁殖力の強いアフリカ種のミツバチが導入されました。最初は隔離されていたのですが、研究室から逃げ出したアフリカミツバチが野生化し、従来飼育されていたセイヨウミツバチと自然交配して、アフリカバチ化ミツバチが誕生したのです。しかしヨーロッパ種のように長い歴史の中で温和なミツバチのみが選抜されて家畜化されたものと異なり、ブラジルのミツバチは巣箱に近寄るだけでも刺しに来るほど神経質で凶暴です。けれどもキラービーと呼ばれるほど殺傷力があるわけではなく、刺された時の痛さも普通のミツバチと何ら変わりはありません。
今では、ブラジルで飼われているミツバチのほとんど全てにアフリカ系の血が流れています。その特徴はヨーロッパ系に比べて非常に高いプロポリスの採取能力です。
プロポリスが注目される以前は、ベタベタして作業の邪魔になるために、プロポリスをあまり集めない系統の選抜も、行なわれていた時代もありますが、世界的にプロポリスのブームが始まったあと、ブラジルの養蜂事情は一変してしまいました。良質のプロポリスを生産するアフリカバチ化ミツバチはブラジルの養蜂には欠かせない存在となりました。
このほかにも世界にはさまざまなミツバチたちがいますが、またの機会にご紹介いたしましょう。

  • グリーンプロポリスを肢につけて帰ってきたミツバチ

    グリーンプロポリスを肢につけて帰ってきたミツバチ

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